バスガイドさんの涙 九州・西鉄観光バス
バスガイドさんの涙 九州・西鉄観光バス
いまから20年以上前の話だから実名を出してもいいと思う。忘れないバスガイドさんがいる。西鉄観光バスの『梅津君代さん』という。おそらく結婚されて、よき妻であり、やさしいおかあさんになっていることだろう。
会社に入って、やがて1年が経とうとする3月末の春休み、《九州満喫グリーン5日間》という、募集もののツアーに添乗した。2回目に「九州」だった。コースは飛行機で羽田から福岡へ飛び、そこから貸切バス。九州内3泊と帰りのフェリーで船中泊という、旅行費は安いけれど、いまでは考えられないハードなコースだった。
福岡~大宰府~柳川~長崎(泊)
長崎市内観光~熊本市内~阿蘇(泊)
阿蘇~鹿児島~霧島(泊)
霧島~桜島~宇土神宮~宮崎~日向~(日本カーフェリー船中泊)~川崎
梅津君代さんは、新人ガイドだった。その年の3月に地元の短大を卒業して、バスガイドになった。まだ新人研修が終了したばかりで、ほとんど博多近郊の定期観光バスか日帰りしか乗務していなかった。九州満喫グリーン5日間が、はじめての長い仕事だったようだ。
添乗員はドライブインでの昼食時などは、お客様とは離れて、「乗務員控え室」で食事をする。お客様と同じメニューとはいかない。簡単な定食ものになる。そしてバスの運転手さんとガイドさんと一緒だ。それは、コースの打合せも兼ねている。君代さんは、最初から
「はじめの乗務なので、よろしくお願いします」と謙虚だった。小柄で丸顔でチャーミングだった。私も去年の新入社員だ。ドライバーは、君代さんの父親位の、年齢のやさしい人だ。
何日か過ぎていくうちに、バスの車内では、君ちゃんの「なぞなぞ」や「クイズ」そして生の歌もお客様を盛立てていく。つたない観光地の説明でも、一生懸命な姿に、お客様は好感をもつ。私もまんざらではない気持ちになっていく。
最終日、宮崎県の日向に到着。車中でのあいさつで君ちゃんは、涙でぼろぼろである。もちろん、30人近いお客様ももらい泣き。バスを降りるときにも、みんなが君代さんと握手をして、涙の別れである。私も抜け目なく、彼女の手を握って・・・。
これから20時間の船旅である。西鉄バスはフェリー乗り場に停まっている。甲板からカラフルな紙テープを見送る君ちゃんに投げる。赤、ピンク、青のテープは届かなかった。最後の黄色のテープを彼女は受け取ってくれた。まだ泣いている。
ちぎれるほど、手を振ってくれる。紙テープは、非情にも君代さんと私を引き裂いていく。
長時間のフェリーの中では、お土産の焼酎を1びん飲み干した。淡い思い出である。(写真は現在の西鉄観光バス:HPから/いまはなき日本カーフェリー)
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コメント
昔はバスガイドさんとのロマンスもあったと先輩からききます。今はあまり若い人がいませんし、長い期間のバス旅行も少ないのでなかなか親しく?ならないですよね。
古きよき時代だと思います。でも西鉄のガイドさんは礼儀正しいですね。全般的に長崎、鹿児島、宮崎と九州のバスガイドさんは親切です。
で、たろべえさん、この君代さんとの後日談はないのでしょうか。
投稿: 現役添乗員 | 2006年10月13日 (金) 14時32分
現役添乗員さん、毎度コメントをありがとうございます。
本当に梅津君代さんとは、1回しか逢ってあないんです。それだけに純粋な思い出なのです。
投稿: もりたたろべえ | 2006年10月18日 (水) 23時47分
2009年 1月 21日~24日まで修学旅行でした
その時クラスにあたったガイドさんガとってもいい人でした
いい人だったのでバスでうとうとしてましたがガイドさんが一生懸命なので眠れませんでした!最終日が来ました
もっとガイドさんと話したりしたかったです
だけどガイドさんのおかげで楽しい修学旅行になったと思います
投稿: 2の4 | 2009年1月26日 (月) 11時28分
2の4の生徒さん




修学旅行とバスガイドさん・・・これは永遠のロマンですね。きっと何十年もたってから、妙になつかしく思い出すものでしょうね。だから「写真」は大事にとっておいてください。
それからガイドさんに、お礼の手紙を出しましょう。バス会社宛で、旅行日と学校名を書いておけば
担当したガイドさんに必ず届きます。
投稿: もりたたろべえ | 2009年1月26日 (月) 23時22分
とびっきり九州3日間の旅可愛いガイドさん、優しい運転手さん、雨、霧時々晴れまもあり楽しい3日間でした、福岡~湯布院、九重大吊橋、高千穂峡、阿蘇ホテルに着く前の阿蘇の火祭りと花火~阿蘇草千里、草花パールマラソンがあり、天草五橋、本渡歴史民俗資料館、富岡城址、鬼池港~舟で口之津港、長崎稲佐山観光ホテル、長崎市内観光、柳川、福岡観光会館、福岡空港までの名所旧跡等の案内が素晴らしかったです。おしいていただいた柳川の若松屋さんのウナギが特に美味しかったです、又九州旅行を計画します。説明が同じ人ならいいなと・・・・・
投稿: | 2010年3月18日 (木) 01時08分
いずれにせよ、これから季節がよくなっていきます。おいしいものもたくさんあります。また、九州の旅行に出るとは、うらやましいですね。


コメントありがとうございました。
投稿: もりたたろべえ | 2010年3月19日 (金) 10時33分
突然すみません。
私も同じような思い出があります。
同じ西鉄ですがもう、45年以上前の話しです。
写真もあり、苗字は分かるのですが、消息は不明です。
こう言う問い合わせに、西鉄は応えてくれるのでしょうかね?
恐らくガイドさんは現在
60代の後半かと思います。
このまま、思い出でいた方がいいのか、なんとか消息をあたった方がいいのか、ちょっと迷う今日この頃です。
投稿: ヤング | 2016年2月29日 (月) 14時09分