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JR深谷駅(埼玉県)駅舎に驚く

仕事で有名な「深谷ねぎ」の深谷へ行ってきた。東京(上野)からJR高崎線で16駅、約1時間20分かかるが、なかなかどうしてすばらしい駅舎なのだ。Vfsh0267

 戦前の東京駅を模写した「赤レンガ」の造りである。この駅舎は平成8年に改修されたときに“深谷をアピールするために”と、戦前の東京駅駅舎の半分の大きさで再現したそうだ。

 この周辺は明治時代から、明治の経済の父・実業家の渋沢栄一によってレンガ工場(日本煉瓦製造)が造られ、ここから全国にレンガが出されたことで「レンガの街」として栄えた。もちろん東京駅駅舎の建築にも、ここで作られたレンガが使用されている。そんなことからできたのが深谷駅。

 ところで本家の「東京駅」は現在、昔の姿に改築中だが、大正3年(1914年)、

明治の建築王・辰野金吾によって設計され、駅舎の全長は、320メートル。

煉瓦の建造物では日本最大を誇る。なるほど立派な建築である。4

 一説によると、この東京駅のデザインはオランダ「アムステルダム中央駅」をモチーフにしたそうだ。実際にアムステルダムで中央駅にも行ったことがあるが、確かに似ているけれど、違う。「東京駅」をデザインした辰野氏は明治時代にロンドンへ建築学や設計の勉強のため、官費留学をしているから実際にヨーロッパの建造物を目にしているはずだが、たぶん参考にした程度ではなかろうか。東京駅の駅舎の方が格段によくできている。

 このあたりの事情は、オランダ研究の上西秀明さんの著作に詳しい。

(大変参考になるので引用する)

 旅行ガイドブックなどの解説でよく見かける説ですが、東京駅はアムステルダム中央駅(写真)を模倣したものであると一般に語られています。なるほど、双方赤煉瓦作りで横に長い構造であることから、どちらかがどちらかを模倣しのだと考えられなくもないかもしれません。しかし実際には、この説は全くの俗説とされており、誰もその説を裏付ける明確な根拠を明らかにしていません。むしろ、それを否定する論拠の方は学術的にも一般に紹介され、支持されているようです。

 もう10年以上も前のことすが、東京で仕事をしていたときに偶然にもこの俗説を否定するような新聞記事を目にしました(「朝日新聞夕刊記事(1988.3.17)」)。模倣説否定の根拠としては、まず第一に、当時設計にかかわったドイツ人技師やその後実際の建設を指揮した日本人技師の設計案の流れを見る限り、アムステルダム中央駅との接点が見出せないこと、第二に、アムステルダム中央駅は中央出口がメインゲートであり、東京駅は中央は皇室用出口で、一般客は利用できず、メインの出入り口は左右に置かれているなど、結果的にも両者が異なった構造を備えるに至ったこと、第三に、建築様式的にもアムステルダム中央駅はネオゴシック様式である一方、東京駅はビクトリアン様式であること、などが挙げられます。このような比較分析は1988年に東京駅舎建て替え議論が盛り上がった際に、その保存運動を進めるに当たって調査された結果にともなうものです。

 残念ながら現在の東京駅は空襲によってもともとあった三階部分が焼けてしまったため、二階にまで縮められた上、簡単なトンガリ屋根がかぶせられてしまいました。従って、比較しようにもそもそもの原型とは異なってしまっており、その違いを視認することはできません。それには古い写真等を用意するしかないでしょうが、なんと私の住む街にある「赤煉瓦博物館」というところに東京駅の原型模型がありました。個人的な感想としては、両者を比較してみて「これはやっぱり別物だ」という結論にならざるをえないように思います。

 駅という機能上の制約に由来する見かけ上の類似(横長三階建て)とメイン建築素材がともに赤煉瓦という偶然の一致が、このような俗説を観光客の間に簡単に広めてしまったのではないでしょうか。 果たして、皆さん自身はどう判断されるでしょう。

 日本と関係しているオランダ人にこのことを話すと、「それでも東京駅とアムステルダム駅は関係がある」と信じたがるようですが、信じたいという気持ちはさておき、関東大震災、東京大空襲、そして近年では東京駅周辺の再開発の波を免れた時代の生き証人をなんとか大切に後世に伝えて行きたいものです。 2003 原稿作成)Photo_86

 「アムステルダム中央駅」はネオゴシック様式で「東京駅」はビクトリアン様式だったのか。赤レンガに惑わされず、もっと勉強しよう。

※写真上:深谷駅・たろべえ撮影、中:東京ステーションホテル絵(大正末期頃)、下:アムステルダム中央駅(1996年)

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コメント

たろべえさん、JR深谷駅、はじめて見ました。なるほど東京駅とアムステルダム駅につながるのですね。意外に田舎(?)の駅舎は味がありますね。新鮮な驚きでありました。

投稿: 通りすがりの旅人 | 2006年11月27日 (月) 23時35分

通りすがりさん
お久しぶりです。

このブログでは上西秀明さんの説を紹介しましたが、実際、アムスで中央駅をみたときには、「絶対東京駅はアムステルダム駅のパクリだ」と思いました。

 深谷駅は東京駅のコピーだそうですので、なかなかおもしろい発見だと、自負しています。

 それにしても「深谷」は埼玉県なのに、高崎のすぐ近くで、東京から行くのに2時間以上かかりました。

投稿: たろべえ | 2006年11月28日 (火) 00時08分

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