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《藤沢周平》に凝っています

庄内(鶴岡)と《藤沢周平》

 「たそがれ清兵衛」や「蝉しぐれ」、そして最近映画化された「武士の一分」などの原作として人気の作家・藤沢周平(1927年~1997年)は、山形庄内の出身である。

山形県東田川郡黄金村(現在の鶴岡市高坂)の農家に生まれた藤沢は、苦学して県立鶴岡中学の夜間部を出て、山形師範学校(現山形大学)に進み、卒業後は地元の中学の社会と国語の教師になった。だが、まもなく肺結核を患い東京の病院で5年間の療養後、業界新聞の記者として数社を転々とする。作家デビューは、ほぼ40歳後半頃といわれ、オール読物新人賞受賞後、1970年直木賞をとり、時代小説家として認められる。

 歴史小説の舞台は、ほとんどが庄内藩をモデルとした「海坂藩(うなさかはん)」である。藤沢の描く物語は、登場人物が英雄でもなく偉大な業績を残したヒーローでもない。名もなき下級武士や体制の中で必死に生き抜く人々に焦点を当てている。どうしても人間として、忘れてはならないものや失ってはいけない大切な心を追求し、多くの作品を世に残したことで知られる。それは、時代小説の枠組みを超え、テレビドラマや映画の映像化によって、ますます人々に共感を与えている。

『蝉しぐれ』

 牧助左衛門の養子文四郎は十五歳である。午前中は居駒塾で経書を学び、午後は石栗道場に通うのが日課だ。初恋の相手、隣家の幼なじみ「おふく」と夏祭りに出かけ、親友たちに冷やかされ、悪童たちには、日頃の秀才ぶりがねたまれ、したたかに殴られたりした。

 平凡な日々が過ぎていくある時、文四郎の父助左衛門は藩に反逆した罪で切腹を余儀なくさせられる。百人町の龍興寺は、耳にひびくほど蝉の鳴き声に満ちていた。文四郎は父の遺体を引き取り世間の冷たい視線の中、荷車を引いて、組屋敷の家まで帰る。

 家の前まで来た時、ふくが一緒に涙を流しながら梶棒を引いて手伝ってくれた。蝉しぐれの中だった。

 そのふくもやがて江戸の藩邸に奉公に出て行った。断絶は免れたが、家禄を減らされ、文四郎は母とともに長屋に移る。さらに剣術と勉学に励んだ。そして父が藩の内紛に関係して切腹せざるをえなかった事情がわかり、次席家老・里村左内から牧家の復縁の沙汰が出る。文四郎は剣の腕を上げ、秘剣村雨の極意を受ける。

 ふくは、そのころ藩主のお手つきとなるが、藩の世継ぎ騒動に巻き込まれ、海坂藩金井村の欅御殿に戻され出産する。(お福となる)里村次席家老一派は、お福母子の抹殺を計画し、その刺客に文四郎を指名するのだった。そのために牧家を復縁したのだ。陰謀を知った文四郎は、元首席家老の助けで窮地を脱し、お福とその子を里村一派から救う。

 二十年後、領内の湯宿で尼になろうとしている「お福」と郡奉行に出世している牧助左衛門(文四郎)は、若かかりし頃の青春時代から抱き続けていた想いを果たすことができた。やはり、蝉が鳴いていた。

「文四郎さんの御子が私の子で、私の子供が文四郎さんの御子であるような道はなかったのでしょうか」

「それができなかったことを、それがし、生涯の悔いとしております」

「ほんとうに?」

「・・・・・・」

「うれしい。でも、きっとこういうふうに終るのですね。この世に悔いを持たぬ人などいないでしょうから。はかない世の中・・・・」

しばしの時が過ぎ、お福は

「これで、思い残すことはありません」

(参考文献:山形新聞社編『藤沢周平が愛した風景』祥伝社刊、会話文は『蝉しぐれ』文芸春秋社文春文庫より)

    DVD『蝉しぐれプレミアム・エディション』4,935円税込みSemi_jk

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コメント

たろべえさん

蝉しぐれ・・・よい映画でした。映画を見てから本を読みました。ふくさんが江戸へ出る前に文四郎の家に会いにいったのに、すれ違いでした。20年後にお福様が手紙をよこして尼になる前に初恋の人、文四郎に再会したいという気持もわかります。そして馬で急いで滞在先の宿へ向かう文四郎。それから再会。はじめての出会いは、ふくが蛇に指をかまれ文四郎に助けられるシーンでした。そのことを何十年も覚えていたお福様。人生は、はかないもの、思い通りにはならないものと彼女は追憶しました。熱いラブシーン。やっと思いをとげることができて、お福様はしばらく泣いてからありがとうといいます。感動的でした。

投稿: 通りすがりの浪人 | 2007年2月25日 (日) 01時19分

たろべえさん、通りすがりの浪人さん

素敵なお話をありがとうございます。気がつけば、日本映画を全然見ない日々を過ごしていました。
DVDを借りて見てみます。

それから、個人的なことなのですが、私のブログの名前もアドレスも変更しました(Cojicoのリンク先を変えています)。内容は、全然変わりませんが・・・
これからも、宜しくお願いいたします。

投稿: Cojico | 2007年2月26日 (月) 21時50分

通りすがりの浪人(旅人?)さん
Cojicoさん

コメントありがとうございます。

藤沢周平の時代小説を読んでいます。
通りすがりの浪人さんが、ストーリーを細かく話してしまったので、これからDVDをみる人には、ラストシーンがわかってしまいますね。それでもみたり、読んだりする価値はあります。

 それからCojicoさんのブログ、デザインとか、かわったのでしょうか。ココログの違い(比較表)がよくわかりません。

投稿: もりたたろべえ | 2007年2月27日 (火) 00時51分

ココログのフリーとベーシックは、見た目はほとんど同じで、フリーの場合、記事の最後に広告が付くのが違いだけと思っていたのですが、どうも管理している会社か(部門か?)が異なるようです。

ですから、フリーをそのままベーシックにすることはできず、新しいアドレスを取得し、記事の移行作業が必要になったのです。

大きな違いは、ココログ出版が出来るか否かでして、フリーは出来ないのです。本にするかどうかは別としても、最初から出来ないと分かっている箇所に書き続けるのは、ちょっと・・・と考えました。

好きな箇所だけをピックアップして本に出来るそうで、値段を見ると、意外と安く仕上がるので驚きました。

たろべえさんのも、海外旅行編、国内旅行編、絵画編、日本史編とか、いろいろ出来そうですね。

投稿: Cojico | 2007年2月27日 (火) 18時52分

Cojicoさん、親切に説明いただきありがとうございます。よくわかりました。

投稿: もりたたろべえ | 2007年3月 3日 (土) 22時43分

藤沢周平の作品にこっておられるとのこと、愛読者の一人として、うれしい限りです(^_^)/
テレビドラマも良かったし、映画も美しかった。原作は厚みを感じます。トラックバックいたしました。

投稿: narkejp | 2007年8月 8日 (水) 19時45分

narkejpさん

コメント拝見しました。
narkejpさんのブログでも藤沢周平関連をたくさん取り上げており、参考になります。
ありがとうございました。

 鶴岡や庄内をまわったとき、この風土が藤沢を育てたのかと感心しました。また、私の母は、藤沢が肺結核で静養した、東京の東村山にあった「病院」に勤めていたことがあり、なんだか縁を感じます。

投稿: もりたたろべえ | 2007年8月 9日 (木) 11時01分

テレビ地上波初登場とのことで「蝉しぐれ」を放映した。(2007年8月26日)見た人はどう思ったのだろうか。時間の制約があるから仕方のないことだが、編集でブチブチに切られてしまっている気がする。

 がっかり。もちろん大筋はわかるが、せめて、ふくさんと文四郎のラストシーンはカットせずに流してほしい。

投稿: もりたたろべえ | 2007年8月27日 (月) 14時20分

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