« 《エスカレーターの話 続編》 | トップページ | 《海を渡った幕末の曲芸団(高野広八の米欧漫遊記)》 »

《ハワイの歴史と文化》矢口祐人著(中公新書)

 東京から人気のハワイ・ホノルルまで6,216km、飛行機なら約7時間で行く。時差があり、ハワイは日本より19時間遅れである。夕方から夜、成田を出発しても時差の関係でホノルルに到着するのは、「同じ日」の朝になる。なんだか得をしたような気分になるが、帰りは逆に日付変更線を通過するため、午後1時頃ホノルルを出発すると、約8時間のフライトだが、成田到着は翌日の午後4時過ぎとなる。

 いまや第一級のリゾート地として、南国の楽園の代表格のハワイだが、実は私たちの知らないハワイの実像がある。観光ガイドブックでしか、知りえなかった「ハワイ」について、いうなれば「ハワイ学」といった新しい切り口を示唆してくれる本がある。Photo_185

 《ハワイの歴史と文化》(2002年刊)は、「悲劇と誇りのモザイクの中で」というサブタイトルがついている。著者は、この本を執筆するにあたり、“バカンスを楽しむリゾート地というイメージばかりが強調され、ハワイ社会をより広い意味で知ろうとする努力はあまりされていないのが現状だ。”といった“問題意識に立ち、ハワイ社会の歴史と文化に焦点をあてる”本書の趣旨は“世界の政治・経済の流れから無縁の、浮世離れした「楽園」というイメージとは異なる”ハワイ像を提供することにあると、著者はいう。(同書プロローグより)

 論の進め方としては、“ハワイを主に日本との関係のうえで考え、19世紀以降のハワイの歴史を移民戦争観光という三つの流れのなかで捉える”という手法だ。なぜなら“これら(三つの流れ)は過去150年ほどのあいだ、ハワイにもっとも大きな影響を与えてきた事項”であるからである。これらを“時系列的に”論じ、最後に“ネイティヴ・ハワイアンの歴史と文化”について、取り上げている。

 内容は前述のように四つの章で展開されている。

第1章 移民たちのハワイ(サトウキビとピクチャーブライド、移民到来、日本人移民の生活、戦後の日系アメリカ人)ハワイ移民史全般の紹介をしている。

第2章 リメンバー・パール・ハーバー(パール・ハーバー攻撃の日、戒厳令下のハワイ社会、戦時下の日系人、戦争の言説)加害者側の行為とその意味、ハワイにとっての第二次大戦の意味、ハワイと軍事の関係について考える。

第3章 「憧れのハワイ航路」(日本からのハワイ観光、ハワイ観光団、バブルとハワイ観光、観光王国ハワイ)観光地としてのハワイがどのように形成されてきたか。観光がハワイにもたらす影響と今後のハワイ観光について考える。

第4章 これからのハワイ(南の島のハメハメハ大王、ハワイ小史、;あらたな「伝統」)

ネイティブ・ハワイアンの歴史を概観しながら、変容していくハワイ社会を考える。

(※各章のコメントはたろべえ要約)

 

 なかなか読み応えのある本である。とくに、移民史は私も興味をもっていた映画

「ピクチャー・ブライド」を軸に取り上げ、話をすすめていくあたりは、わかりやすかった。(しかし映画をみていない人にとっては、理解しにくいかもしれない)

 さらに新書版のため、内容も凝縮されてしまうのだろうが、白檀貿易、捕鯨、砂糖きび産業、パイナップル産業、軍需産業、観光産業といった19世紀以後の「ハワイ産業史」が、もう少し整理されていれば、よかったと思う。これからのハワイといった視点の将来展望についても具体的な提言がされていれば、なおよかったのだが、このあたりはわれわれ観光業にたずさわる者の使命かもしれない。おすすめの1冊である。

|

« 《エスカレーターの話 続編》 | トップページ | 《海を渡った幕末の曲芸団(高野広八の米欧漫遊記)》 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

たろべえさん、ブログのデザインかわったのですか?ぶっくりしました。
それにしてもいつもながら「ハワイ学」のお話は有益でした。拙者はまだハワイに行ったことがないのでたいへん参考になります。

投稿: 通りすがりの旅人 | 2007年6月15日 (金) 23時51分

通りすがりの旅人さん

ブログのデザイン、変更してみました。
気分転換です。失礼しました。

投稿: もりたたろべえ | 2007年6月18日 (月) 12時26分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/177442/15442456

この記事へのトラックバック一覧です: 《ハワイの歴史と文化》矢口祐人著(中公新書):

« 《エスカレーターの話 続編》 | トップページ | 《海を渡った幕末の曲芸団(高野広八の米欧漫遊記)》 »