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【にっぽん 旅の文化史】《お伊勢詣であれこれ》

 江戸時代には庶民の間に人気となった「伊勢参宮」、お伊勢詣でだが、いったいどの位の人が旅に出たのだろうか。いまなら県や地元の観光協会等の観光動向調査でわかりそうだ。ところが享保3年(1718)4月、「伊勢神宮への参詣者数」を伊勢山田奉行が幕府に報告書を出した記録が残っているそうだ。これによると、この年の元日から4月15日までの間に42万7千人だった。この時代の伊勢参宮は、多くが農民であったため農閑期の冬場に集中していた。したがって年間では、およそ60万人が伊勢に旅したと予測される。(『江戸の旅』今野信雄著、岩波新書1986年)

 享保年間の日本の人口は、3,000万人といわれている。歩いて旅する時代、50人に

一人が伊勢詣でに出たわけだ。(人口1億3,000万人の内、海外渡航者数が1,600から1,800万人という現代と比較しても仕方がないが、江戸時代の「お伊勢さん人気」はさすがであると思う)

Photo

さて、伊勢にはお参りの「案内人」で有名な《御師:おんし》という職業があった。ガイドをするだけではなく、旅館業も営んでいたというから、まさに旅行業の原型。

御師は、本来、特定の社寺に属し、信者のために祈祷をおこない、参詣のために宿泊・案内などの世話をする下級の神職。伊勢神宮のものが有名で、通常は「おし」だが、伊勢では、「おんし」と呼ぶ)

 庶民は伊勢詣でにあわせて、京都や奈良方面にも足を伸ばすことが多かった。驚くべきことには、京や奈良の宿屋(旅籠)の「営業マン」が伊勢に出張して来ており、客引きをおこなっていたそうだ。しかも、かさばるみやげ物や不要な荷物を預かり、京の宿へ客より先に送ってくれたそうだ。もちろん、予約客に限っていたわけだが、お客さんにとっては、身軽に旅を続けられるに違いないし、宿側では、確実に宿泊客を確保できるというすばらしいセールス・アイデアだ。

 いま全国の温泉地でも、最寄りの駅で預かる「手荷物配送サービス」がある。こちらは、ほとんどが、500円ワンコインが相場だ。まさかルーツが江戸時代にあるとは、思ってもいなかった。日本の旅文化について、調べてみると目からウロコが、たくさん落ちる。

(絵:伊勢名所図会「明星」部分)

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コメント

たろべえさん 京都の宿屋のセールスマンが伊勢に出張して来ているのも驚きですが 手荷物の先送りも中々たいしたものです。まだまだ知らない事が沢山あるので面白く読みました。

投稿: 通りすがりの旅の者 | 2007年12月 5日 (水) 12時42分

通りすがりの旅の者さん

コメントありがとうございます。いつも応援のメッセージ感謝です。

 さてさて、伊勢参宮ですが、なかなか興味深いことがたくさんあります。ネタがあればまた書きます。

投稿: もりたたろべえ | 2007年12月 5日 (水) 18時21分

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