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【にっぽん 旅の文化史】江戸時代の人気・《大山》信仰・その1

 神奈川県伊勢原市にある「大山(おおやま)」は、古くから山岳信仰の霊山として、農民たちからは、雨乞いの神様(雨降り神社)である阿夫利(あふり)神社として人気を集めていた。(「石尊大権現」と呼ばれていた)また、大山は相模湾寄りに位置する関係で、農業の神様であると同様に、魚場を確認するため大山を一つの目印としたため、漁師たちからも信仰を集めた。参道の石段道を行くと、魚市場や青果市場の講の名前が刻まれた石柱の囲いをいくつも見ることができる。豊作と安寧秩序を願い、とくに江戸時代から「講」を作り、参拝して来た歴史を伝えている。

江戸時代の旅では、一生に一度の「伊勢参宮(お伊勢詣で)」に比べると、江戸周辺や関東地方から、相模国「大山」は、はるかに近い。江戸からおおよそ18里(72㎞)、片道1泊2日の行程で、旅行日数でも大山での滞在や帰りがけの遊興を加えても、5、6日間程である。しかも関所を通らない。さらに大山への「旅」は「江ノ島」や鎌倉、富士山などともセットで旅することも多かったようだ。もちろん落語で有名な大山詣での帰りに「藤沢」の女郎さんとめくるめく一夜を結ぶ旅人もいた。

新宿から小田急線で約1時間の伊勢原下車。神奈川中央バスで約30分、丹沢山系に属する「大山」は、標高1200m近い。ひっそりとした山間(やまあい)にある。いまでは都内を朝出発すれば、十分に日帰り(登山)が可能な距離であるが、ここ大山には宿坊や旅館が約51軒もある。名物は丹沢の清い水を利用した「とうふ」料理。宿坊のほかにも料理屋や茶店、土産物店(民芸品では大山こまが有名)がたくさんある。それにしてもケーブルカーの駅までは500mも階段を登る。正式には「大山観光電鉄」の「追分駅」が始発で、次が「不動前駅」で終点が「下社駅」。しかし頂上の阿夫利神社(本社)へは、さらに石段と山道を登る。1時間半から2時間はかかるため、本格的な登山靴姿の人が多い。実際に登ったことがあるが、本当につらい道のりだ。

江戸時代の大山参りは、夏場の時期に限られていたそうで旧暦の6月27日から7月17日めでの20日間に決められていたそうだ。白装束に杖をつき、六根清浄と唱えながら、この苦しい山道を登った。もとより、ケーブルカーなどはないため、大山の宿坊に泊っていても、かなりきつい。(本当に昔の人は健脚である)

さて「大山講」は、江戸時代、関東地方を中心に大変な隆盛をみた。それには、山内を案内する御師(おし)の存在を忘れてはならない。彼らは伊勢神宮周辺でもみられるように、寺社の先導案内をして、信者(お客)を自分の経営する宿坊に泊める。春先や冬場は年に1、2ヶ月は、集客の旅に出て、檀家(講員)をふやす。いわばセールスに関東地方を歩き、御札や護摩符を配りながら、「大山詣で」を進めた。この檀家(講中)は、いまの神奈川、千葉、山梨、静岡(伊豆半島も含む)の各県に多い。しかも各地から大山への道は、「大山道」と呼ばれ、現在でも道しるべが残っているケースもある。

お伊勢まいりでも同様だが、セールスをして集客し、自らの宿坊(宿泊施設)に泊め、自ら観光地を案内・先導するという、システムができあがっていた。御師、これこそ総合的な《旅行業》の先駆け的存在であった。

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コメント

たろべえさん 大山は中学生の時に遠足で登ったことがあります。ほんとに大変でした。ところで たろべえさんの文章で 江戸時代の大山参りは、夏場の時期に限られていたそうで旧暦の6月27日から7月17日までの20日間に決められていたそうだ とありますがなぜ夏なのでしょうか。

投稿: 通りすがりの旅の者 | 2008年1月 5日 (土) 11時41分

通りすがりの旅の者さん

コメントありがとうございます。本年もご愛顧のほど、よろしくお願いします。

 さて「大山参り」のいくつかの質問に関しましては、ブログの大山2で書かせていただきました。お読みくださればわかると思います。

投稿: もりたたろべえ | 2008年1月 7日 (月) 18時49分

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