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【にっぽん 旅の文化史】江戸時代の旅行ガイドブック《旅行用心集》

 いまでも人は旅に出るとき、わくわくしながら書店でガイドブックを求める。写真や観光地のデータ、詳細な現地取材のグルメレポートなど、多くの冊子を見比べながら、まさに旅行出発前から旅は始まっているのかもしれない。東京駅や羽田空港、はたまた国際線の成田空港の売店でも旅行のガイドブックは、飛ぶように売れているそうだ。

 庶民が旅に出ることも一般的になってきた江戸時代、旅行案内書、ガイドブックなるものが出版され、人気を集めることになった。当時の旅行案内の書物では、《道中記》と呼ばれる、各街道筋の宿場や名所・旧跡などの寺社観光案内、各宿場間の距離(里程)や名物・みやげなどを記したものが知られている。

 また携帯用の折りたたみ式地図として、江戸の尾張屋清七の《江戸切絵図》や《江戸砂子》と呼ばれる地誌が人気であった。とくに神田の名主、斉藤幸雄・幸孝・幸成(祖父・子・孫)三代が30余年かけて編集した、《江戸名所図会》は、江戸と近郊の観光名所668景をイラストとコンパクトな説明で紹介、絵師・長谷川雪旦(せったん)作のスケッチがほのぼのと生きていて、目でみる旅行案内になっている。天保7年(1836)発行。

 江戸時代、ベストセラーとなったガイドブックは、文化7年(1810)、八隅芦菴(八隅蘆庵やすみろあん)が出版した《旅行用心集》である。江戸の旅文化を紹介する研究書には必ず登場するこの書物は、最近、現代語訳本も発売されているので、ぜひ読んでいただきたい。(もちろん、原文で読むとさらに興味深いはずだ)Ru03_01067_p0003s

 用心集では、【まえがき】にあたる「自序」がある。そこで八隅芦菴は、執筆の理由を明らかにしている。Photo

『余は若いころから旅が好きで、あちこちの国に行ったもんじゃ。それを知っている知人が旅行に出かける際にやってきては、アドバイスを求めてくる。いままでは、そのたびに注意事項などを書いて渡していたが、最近はめっきり歳をとったせいか、それも面倒になった。そういった要望を断るわけにもいかないので、これまで書き溜めたものを整理して集めたり、新たに書き起こしたりして、旅の助けになるような事柄を小冊子に、まとめることとした。これから旅に出る人の役に立つように、(木版)印刷して『旅行用心集』と名付けることになった次第じゃ。』

 内容は、東海道や木曽路などの街道の宿場や景勝地の紹介や距離などのほか、北国の旅の仕方、船酔いの対処の仕方、有名温泉地の記事など、多岐にわたっている。なかでも興味深いのは、

「道中用心61ヶ条」という、旅の具体的な注意事項の列挙である。いずれ細かく紹介したいが、現代でも十二分に通用する内容で、八隅芦菴先生の経験の豊富さと思慮深さには、感服する次第だ。その興味深い内容は、次回へ。(イラスト:たろべえ)

※参考:『旅行用心集』八隅芦菴著(八坂書房刊)、『現代訳旅行用心集』桜井正信監訳

(八坂書房刊)

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