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【にっぽん 旅の文化史】《旅行用心集》の「箱根特集」

江戸時代、庶民が寺社への参詣を名目に、いわゆる「観光」目的でも旅に出るようになった。《旅行用心集》でも全国の温泉地を紹介しているが、著者・八隅蘆菴(やすみろあん)先生、有馬、熱海、箱根、会津天寧寺(東山)、草津・伊香保温泉などの説明に力が入っている。

 「箱根」も「熱海」と並び、大山詣り、富士山詣りなどの帰路、旅人が宿泊する。湯治は普通7日間から10日間を1滞在(1クール)としていた。3週間程度の滞在がポピュラーであったが、東海道を旅する人にとって、小田原の宿には泊らず、足を伸ばして「箱根」の温泉に宿をとる人も多かったようだ。とくに箱根では、長期滞在と違い、「1泊湯治」と呼んで旅人を宿泊させた。

 《旅行用心集》の記述『箱根特集』を紹介しよう。

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“ 相州(相模の国)箱根の温泉は、江戸から二十里余り(約80㎞)で「関所」の手前であり、箱根への道のりは、とりわけ、けわしいわけでもなく、都の老若男女でも湯治に行きやすい。とくに江ノ島、鎌倉、金沢八景あたりは、景色もよく、これらの名勝地を旅の道中に加えれば、気分も晴々として、養生のためにもよい湯治場といえる。

 この箱根七湯は、いずれもすばらしい名湯で、「熱海」と(兄弟のように)肩をならべるほどである。箱根と熱海は、わずか七、八里(約30㎞)離れているだけなのに、どちらも有名なのは、温泉の効能に違いがあるからである。さらに、箱根は(東都)江戸から交通の便がよく、その繁盛ぶりは日本一といえる。“(たろべえ意訳)

 用心集の蘆菴先生の「箱根七湯」案内はつぎのとおり。距離と温泉の効能を紹介している。

〔カッコ内〕は、現代の「箱根町観光協会」の公式な泉質と適応症案内。

      箱根湯本温泉:小田原より一里半余り(約6㎞)、湯宿九軒

効能:いろいろなできもの、性病の類、痔の諸症状、腰痛、さしこみ(胸や腹の急激な痛み)、切り傷

〔単純温泉・アルカリ性単純温泉・ナトリウム-塩化物泉  神経痛、関節痛、慢性消化器痛、冷え性〕

      塔の沢(塔ノ沢)温泉:湯本より十二丁(約1.3㎞)、湯宿十二軒

効能:頭痛、めまい、下半身の冷え性、打ち身、くじき、口・舌の痛み、できもの、喘息、血痰

〔単純温泉・アルカリ性単純温泉 神経痛、関節痛、冷え性〕

      宮の下(宮ノ下)温泉:塔の沢より一里半(約6㎞)、湯宿八軒

効能:痔の諸症状、淋病、皮膚病、さしこみ、サナダ虫(腸に寄生する寄生虫)

〔ナトリウム-塩化物泉  神経痛、関節痛、冷え性、痔疾、慢性皮膚病、慢性婦人病、高血圧症〕

      堂ヶ島温泉:宮の下より谷へ十丁(約1㎞)ばかり下がる、湯宿六軒

効能:宮の下温泉と同じ

〔ナトリウム-塩化物泉 適応症は宮の下温泉と同様〕

      底倉温泉:宮の下のつづきにあり、湯宿四軒

効能:痔の諸症状、脱肛など、すべて肛門の痛みに効く。そのため男娼が、湯治に行く。

〔ナトリウム-塩化物泉 神経痛、関節痛、冷え性〕

      木賀(きが)温泉:底倉より半道(一里の半分、約2㎞)、湯宿三軒

効能:手足の麻痺、筋骨の痙攣(けいれん)、頭痛、痰づまり、打撲、肉離れ、くじき、

痛風など。

〔単純温泉・アルカリ性単純温泉 神経痛、関節痛、冷え性〕

      芦の湯(芦之湯)温泉:底倉より一里十六丁(約5.7㎞)、湯宿五軒

効能:脚気、筋肉の麻痺、結節(皮膚や内臓にできる,小さくてまるいはれもの)、わきが、寝小便、淋病、切り傷、

〔単純硫黄泉(硫化水素型)・単純温泉 神経痛、関節痛、動脈硬化〕

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蘆菴先生がいうように、江戸時代には五街道が整備され、「東海道」に沿った箱根は「箱根七湯」の湯治場として、栄えた。なかでも玄関口にある「箱根湯本」は、賑わいをみせていた。七湯の温泉場は、早川沿いにできた温泉集落であった。

 それにしても蘆菴先生の七湯の効能分析は、ほとんど正しい。参考文献があったのだろうが、当時は、まだ江戸時代である。その情報収集能力や取材姿勢は、尊敬に値する。

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コメント

箱根特集 面白く読みました。江戸時代にはすでに有名な温泉地であった訳ですね。どうも東京の人は箱根というと近すぎてあまり行きませんね。それから温泉の効能書きですが科学が今ほど進んでいない江戸時代にわかっていてそれもほとんど間違っていないとは驚きです。

投稿: 通りすがりの旅人 | 2008年1月18日 (金) 23時30分

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