« 《玉くしげ》を読む【その9】そぞろ歩きの湯の街・熱海 | トップページ | 《玉くしげ》を読む【その10】「熱海賛歌」 »

《玉くしげ》を読む【その9続き】うなぎ釣れず

 この日(4月21日)は、神社詣でと七湯源泉めぐりでは終わらなかった。

 作者の原正興(はらまさおき)は、帰り際、大湯の前から海に向かって、湯が流れ落ちる川を発見。行ってみると、何やらこどもたちが、この川で釣りをしている。きけば「うなぎ」が獲れるという。器用なこどもなら、二、三匹釣り上げて持ち帰るそうだ。そこで正興、さっそく針と餌を購入し、うなぎ釣りに挑戦した。Photo_5

つれづれのまゝに、はり(針)もとめ、石垣のまにまにさぐり行くに、おもひがけなき横のかたよりくひ付き、餌を失ひたり。又餌さしてやれば、こたびは石の間へ糸引き入れて針まで失せたり。(ほんの暇つぶしに、針と餌を求め、川岸の石積みの間に糸をたらしてみた。すると思いもかけず、ウナギは横から食いつき、まんまとエサを取られてしまった。つぎには、川底の石の間に逃げ込まれ、エサばかりか、針まで食いちぎられてしまった)

「せうと(兄人)の神(海幸彦)のとがめあらば、いかにせん」とたわぶれつゝかへれば、光興ぬしの待ち居りて「さちいかに」といふ。

(針や糸など、釣道具をなくしてしまい、「兄の海幸彦に叱られたらどうしよう」・・・などと、冗談をいいながら宿へ帰ると、光興が待ち構えていて、「山幸彦、釣果(成果)はどうだった?」ときく。「さち」は山幸彦のサチと幸運はどうだった、と掛けている)

しかじかとかたれば、「われも山の幸なければ、(山幸彦に)弓矢かへし奉らん」などわらひて、ともに湯あみし、けふも暮れぬ。

(かくかくしかじか・・・と語れば、光興は「私も山の幸をとってこれなかったから、山幸彦に弓と矢を返さなくてはなりませんな」と、笑った。二人で湯浴みをして、今宵も暮れていった)B

 

これは、日本神話で有名な「海彦、山彦」の話がネタである。

山幸彦が、兄の海幸彦と、お互いの猟に使う道具を交換して、魚釣りに出かけた。山で活躍する山幸彦は、魚の猟は苦手で、釣針を失ってしまう。そこで、針を探し求めるために、塩椎神(しおつちのかみ)に助けを求め、神の指示により龍宮城へ行く。そこで山幸彦は、海神(豊玉彦)の娘・豊玉媛(とよたまひめ)と出会い、結婚。探していた「釣針」ばかりか、「潮盈珠(しおみちのたま)」と「潮乾珠(しおひのたま)」(宝石?)を授かり、兄の海幸彦を屈服させることができたという話である。

 結局、この日は夕食のおかずがなかったのか、食事の記述はない。

|

« 《玉くしげ》を読む【その9】そぞろ歩きの湯の街・熱海 | トップページ | 《玉くしげ》を読む【その10】「熱海賛歌」 »

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/177442/40201732

この記事へのトラックバック一覧です: 《玉くしげ》を読む【その9続き】うなぎ釣れず:

« 《玉くしげ》を読む【その9】そぞろ歩きの湯の街・熱海 | トップページ | 《玉くしげ》を読む【その10】「熱海賛歌」 »