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《玉くしげ》を読む【その17】望郷

4月29日

けふも雨ふる。ひる過ぎてやみたれども、雲は猶はれみはれずみ、神無月の空のごとし。つれづれなれば、われも人も歌よむ。G

 むさしのゝかたは雲だに見えざるに 箱根の山はむら雨ぞふる

(武蔵野・江戸の方角には、雲ひとつかかっていない。比べて箱根の山にはむら雨(にわか雨)ばかり降る

 雲かゝりくもはれ日にはいく度も 鷹の巣山(たかのすやま)のかはるけしきや

(雲がかかったり晴れたり、鷹の巣山は、その度に姿をかえるようだ)

 

箱根山雲ゐるみねに旅ねして 雨に泪(なみだ)に袖くたすらん

(箱根山の雲のある峰に旅寝をすると、さびしくて雨や涙で袖を濡らしてしまうもの)

 

箱根山あけくれおもふ都にも 明暮れま(待)たんかへりゆく日を

雨ばかりである。昼過ぎには、雨もやんだが、空はくもっていて、まるで10月の空のようだ。これは、4月29日の記述だが、「旧暦」だから現代では5月末頃だろう。することもなく所在無さに、歌を詠んだ。この4首は、正興と光興でつくったものだろう。

 そろそろ、望郷の念が出始めてきた。早く「湯治」期間が明けて、江戸へ帰りたいと。思うのであった。

 さて、雨上がりの午後、二人は近くの鷹巣山(たかのすやま)の麓(ふもと)にある神社にお参りした。熊野権現であろうか、詳しい記述はない。田畑の細い道を行くと、「底倉温泉」の上へ出た。そこに「挽物(ひきもの)細工」の店があった。寄木細工であろう。店をのぞいて、何か土産にするものはないかと物色してみた。なんと、「熱海」で見たものと同じ細工物だった。

Photo

 この「寄木細工」は、当初《湯本細工》といわれていた。品物には「香盆」、「たばこ盆」、玩具、「茶せん」、「円盆」などがあった。いまでもそうだが、高価なものだ。(大量生産の粗悪品は、寄木模様の薄い木を張り合わせたもの)H0401_1

宿へ戻ると、主(あるじ)が、夕食用に魚を何種類か籠(かご)に入れて、届けてくれた。

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