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《玉くしげ》を読む【その21②】そろそろ帰ろう江戸へ

 さて同じ、明日はチェック・アウトという前夜の出来事。この湯宿・奈良屋で、なんと光興の知人に偶然、遭遇した。江戸尾張町の料理屋「伊勢屋」の主人である。きけば、伊勢神宮に「神楽舞」を奉納する団体(講)の世話人になり、多くの人を連れて参拝した帰り道だという。おまけに隣の部屋に泊ることになっていた。P

 「お互い旅に出て、ふすまひとつ隔てて泊るとは、これも何かの縁ですな。さあさあ、今夜はとことん飲みましょう」ってな具合で、伊勢屋に誘われ、光興は、正興にも「一緒にどうかね」と、誘う。しかし、酒好きの正興ではあるが、患っている目の痛みが激しく、断った。

 「すむさとのおなじければ、わきてなつかしきに、君はなど『むらさきの一もとゆゑに』とはおぼさざる」

とうらみつゝ、別れいでぬ。

「むらさき」は、《玉くしげ》を読む【その19②】道了権現の帰り道 で取り上げた《紫草、むらさき草》である。和歌の道では、なんとしてもおさえておきたいのが、つぎの古今和歌集の一首。

 むらさきのひともとゆゑに武蔵野の 草は みな(皆)がら あはれとぞ見る

むらさき草が1本生えているおかげで、(その高貴な紫色が思い浮かび、おくゆかしく)武蔵野(=江戸)にゆかりのあるすべての草花に心がひかれ、いとおしく思う、こんな意味だろうか。

 したがって、酒の誘いを断った正興に対しての光興のことばは・・・

「箱根ではなく、われわれと同じ江戸に住むゆかりの人なのだから、特別になつかしいとはおもいませんか。(それをむげなく断るとは…)」

と、皮肉をいって光興は出かけていった。Syoubu2_2

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