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《玉くしげを読む》【その25】金沢八景から川崎宿へ

5月8日

朝とく起きて見るに、雨風やまず。かれ飯たべなどするうちに雨も風もやみぬ。P

 朝早く起きてみたが、外は、まだ風雨であった。だが運の良いことに、朝食をとっているうちに、雨も風もやんだ。そこで、一行は宿の主人に「せっかくだから、八景を見物したいのですが、どなたか案内人を頼めますかな」ときく。「それなら一覧亭にのぼれば、八景はすべて見えます。一箇所づつ行くことはありません。よろしければ、宿の前の瀬戸橋に船を用意しましょう」と、いうことで、船に乗った。

 船岸に着き、展望台「一覧亭」に登る。そこの茶店では、女が八景をあれこれ案内してくれた。ところが、「月、雁、或いは雪など、其のをりに見るならば、けしき(景色)こと(異)ならましを、青葉しげれる時に“雪よし”といふも、ふさはしからぬ心地す」

 確かに、青葉茂れる初夏の時期に、秋や冬の情景を思い浮かべるというのも、どうかと思う。もともと、金沢八景は、もろこし(中国)から来た心越禅師が、この地を見て

(もろこしの)西湖(せいこ)に似ているとして、からうた(漢詩)をつくったことに由来するもの。「平潟の落雁」などは、いってみれば、汐が引いた海で貝を拾う海女のこどもが集まっているのを、雁にたとえたものだ。そうはいっても、よさそうなのは、

「瀬戸の月」くらいなものだ、となかなか手厳しい。

 

 さて、一覧亭をあとに、再び乗船。上げ潮のため、船は早く、巳のときの下り(午前11時)には、東屋へ戻り、早めの昼食をとり、出発した。瀬戸橋を渡り、能見堂に寄り、前へ進んだ。途中、梅の名所で名高い「杉田の里」も見ようかと思ったものの、茶店の主人が「いま杉田の里へ行っても、梅だか桜だかわからない青葉が茂っています。花咲く春においでになったらいかがですかな」と、いわれ納得。やがて保土ヶ谷へ。

 さらに、神奈川宿から生麦村を行く。行きしなに見落とした「浦嶋寺」に行ってみたが、誰もいないので見学できない。歩き続けていくと、川崎宿。夕暮れ時になってしまった。はじめは、宿の「新田屋」に入るが、不都合があり、「藤屋」に泊ることにした。

川崎から江戸までは、四里半(約18㎞)と近い。

(参考:楠山永雄氏『ぶらり金沢散歩』、イラスト:広重『江戸名所図会』「瀬戸橋旅亭東屋」より)

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