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【にっぽん旅の文化史】渡辺崋山《游相日記》を読む「その3」

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このやどりに、夜に入り到れり。ざしきは奥の方にふた間ありて、新にもふけたる家なり。我が借かたは殊にきよく心やすし。隣にくさめ(くしゃみ)する人あり。いかにととえば、これも旅人にて、我より先に借りて、燈(ともしび・あかり)のもとにうづくまりたる翁、相州今泉といふ所のものにて、地頭大澤二十郎どのゝ用ありて江戸へ出るなり。今ひとり入来るは、相模の山おくにすめる孫兵衛といふむくつけき男なり。こは秋の半(なかば)より猪と鹿とを打て都へ出すを業とするものなり。所は半原とて、烏山侯の支封なりとぞ。主人酒を買ひ、肴をもふけ、書畫(書画)を乞ふ。酔ひに乗じ、燈のもとに数十枚を揮(ふる)ふ。

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 【(荏田宿升屋という)この旅籠に着いたのは夜になった。座敷(部屋)は奥に二間あり、新築である。通された部屋はことさらきれいで気持ちがよい。隣の部屋には、くしゃみをしている人がいる。気になって襖(ふすま)を開けてみると、先客で灯りのもとにうずくまり横になっている老人がいる。話しかけてみると、相模の国今泉から来た人で、領主大澤氏の用事で江戸へ出る旅の途中とのことだ。もう一人客が到着した。相模の山中に住む孫兵衛という荒々しい男である。この男は、秋も半ば頃から猪や鹿を打って、江戸へ売りに行くことを仕事としている。住んでいる場所は、半原という烏山侯の領地。さて、宿の主人は酒と肴を持参してきて、崋山に書画を依頼してきた。すすめられた酒に興が乗り、行灯の下で数十枚も揮毫した。】

   

 そうこうしていると、猟師の半原の孫兵衛と今泉の(くしゃみの翁)佐右衛門たちも、酒と肴を携えて、崋山に書画を所望してきた。弟子の梧庵も書をつくる。そのうち酒も進み、崋山は酔いがまわってかなりの酩酊状態だが、この二人に句をよんだ。

 今泉の佐右衛門へおくる。(隣の部屋のくしゃみの老人)

 荏田のやどりにて此人に逢ふ。百姓と寝もの語(がたり)や稲の秋

 半原の孫兵衛におくる。(例のイノシシや鹿の猟師)

 いざとはん紅葉(もみじ)のしぐれもる家か

 梧庵も又、

 中ゝ(なかなか)に逢(あい)にけるかな 

あはさらば かくも別れのおしからましを

 酔いに任せて句会が始まった。「なかなか珍しい出会いであるけれど、会えばすぐ、さらばと言わねばならぬ、本当にお名残惜しゅうございます」などと弟子・梧庵は、陳腐に句をよんだ。

(※旅籠升屋の室内図:『日本庶民生活史料集成』第三巻、三一書房刊、「游相日記」P222)Kazan510

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コメント

せっかくのいい記事なのに、字が小さくて読みにくいのです。

フォントを改善してください。お願いします。japanesetea

投稿: kh | 2009年1月19日 (月) 22時52分

bottle
申し訳ありません。

 原稿をワードで書いておりまして、推敲せずにアップしたもので、読みにくくてすみません。さっそくなおしてみました。アドバイス感謝します。
(khさん、以前の原稿を削除したら、いただいたコメントも消えてしまい、私が記憶で復活させました。大意はあっていますよね?)

投稿: もりたたろべえ | 2009年1月19日 (月) 22時56分

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