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【江戸時代の寺社めぐり】村尾嘉陵《江戸近郊道しるべ》を歩く「谷原村長命寺道くさ」その1

『谷原村長命寺道くさ』(その1)文化12年(1815)9月8日

 嘉陵(かりょう)56歳の9月、現在の東京練馬にある名刹「長命寺」を訪ねた。ここは、紀州高野山を模した真言宗の寺である。わざわざ高野山(和歌山県)まで出かけて行くのも大変な江戸時代、「御府内(江戸城を中心とした行政区域内)八十八霊場」が江戸にできた。長命寺は、そんなわけで西の高野山に対して「東高野」あるいは「新高野山」と呼ばれ、高野山におまいりしたの同じご利益があると、庶民の信仰を集めたそうだ。

 よつ時(午前10時頃)、江戸城清水門内にあった清水家を出発した嘉陵は、椎名町(東京都豊島区)から惠古田村(中野区江古田)を経て練馬領(練馬区)に入る。

 この辺(あたり)西望すれば、わづかに秩父山の北岬をみる。畑は蕎麦花さきて霜の如し。椎名町の半(なかば)よりこの辺及び谷原(やはら)迄の際、路傍栗、なら多し、しばしば落ぐりを拾ふ興あり。

■練馬のこのあたりから西の方角を見ると、うっすらと秩父の山々が遠望できる。畑には白いそばの花が咲き、まるで霜のようだ。歩いてきた椎名町の中間くらいから練馬の谷原(やはら)村までの間、栗の木や楢(なら)の木々が多い。しばしば道端で落ちている栗を拾うのも趣(おもむき)深いものだ。

 貫井村の路の左に子の権現の社あり。材木の間に竹を架して、商人のものうる跡あり。とへば定れる日ありて、古き衣、ものくふ器など、すべて古きものを江戸よりもて来りて、土人にひさぐと云、社は東に向ひて小祠也。

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■貫井村の道の左手に子の権現(円光院)がある。この寺の境内には、商人がものを売った跡がある。聞けば毎月決まった日に古着や食器の中古の品を江戸から持参して地元の人に売っていたそうだ。ここの本堂は東に向く小さな祠(ほこら)である。

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☆円光院(南池山 貫井村円光院:真言宗智山派、東京都練馬区貫井5-7-3)

 武州(埼玉県)飯能(はんのう)にある子ノ聖大権現、現在の天龍寺(天台宗・大鱗山雲洞院天龍寺 飯能市大字南461)に由来する。観音堂に安置されているご本尊の十一面観音像は、「馬頭観音」とも称され、馬の守り本尊として農民や馬飼いの人々に信仰されてきたそうだ。その証拠に山門前には、文化7年(1810)に建てられた「子ノ聖観世音」碑や江戸時代の「馬頭観音」石像が、いまも残っていた。円光院は、西武池袋線「中村橋駅」から徒歩10分程の目白通り沿いにある。

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 少し行けば岐路あり。右に行けば、所沢、秩父、左は東高野山也。こゝに名碑あり。東野某銘文を作りて彫付、前に記し置きぬ。こゝを過ぎて屈曲盤廻する事五六にし、高野山うら門に出る。

■少し進むと、道しるべが立っている。右に行くと所沢・秩父方面、左は東高野山。現在の目白通り、「練馬二小前」交差点(練馬区貫井5-17)に、この道しるべの石碑が現在も残っている。嘉陵の書いたイラストと若干、碑文が違うが、寛政11年(1799)四月に建てられたもので、碑文は東野孝保。高さ三尺五、六寸(1mほど)で幅二尺余り(約70cm)の大きさだ。「右 処さは(ところさわ) ちゝ婦(ちちぶ)」と読める。このイラストで嘉陵は、「左 東高野山 貫井村」と記すべきところを「右」と書いている。いよいよ、長命寺である。

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(平凡社、東洋文庫『江戸近郊道しるべ』より)

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コメント

たろべえさん 楽しく読んでいます。ところで渋谷や新宿区にも 歴史の有る寺や神社が沢山あります。江戸時代はどうなっていたのですか。

投稿: 通りすがりの旅人 | 2010年5月17日 (月) 08時29分

イヤー^_^; こうして頂かないと目にする事さえないですから(ちゃんと読んでないのバレバレ(^-^;)

年を重ねお参りする事の尊さ感じます

近い善光寺 liveではいつも浅草寺 そして教えて頂いた今戸神社 そして以前お話した 舞台の彼女が紹介ししかも偶然にそこで本人と遭ってしまった。渋谷の今王神社(笑) 神頼みではなく自分に言い聞かせているんですよね(笑) でも素晴らしい事!だって時には叶うんですから(笑)

投稿: いっくん | 2010年5月18日 (火) 10時46分

通りすがりさんbottle 
コメントありがとうございます。新宿区や渋谷区はもちろん港区などにも、たくさん寺社があり、江戸時代にも庶民でにぎわっていました。近々紹介します。

いっくんbeer
善光寺は大好きで何度も行きました。宿坊の薬王院さんのご住職と親しくさせていただいています。最近は少しご無沙汰です。会社の協定機関連盟の信越支部を担当している時は、毎月のように長野へ行っていましたね。
 寺社まいりは、宗教心よりも「心が洗われるようなすがすがしさ」を味わえると思います。

投稿: もりたたろべえ | 2010年5月18日 (火) 19時37分

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