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《熈代勝覧》江戸時代、日本橋の店舗模様【その5】

    本町二丁目

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●出雲寺和泉掾〔いずもじ・いずみのじょう〕(書物問屋)

 出雲寺和泉掾は、江戸時代初期、京都で創業した由緒ある名門の書店。ここが、いわば江戸支店である。幕府が江戸城本丸内に設けた紅葉山文庫(徳川将軍のための御文庫、いまの図書館)に書物を納入する御用達商人(御書物師)であった。

 また漢学、有職書、歌書、『白氏文集』、『源氏物語』など和漢の古典を中心に出版したほか、『武鑑』(後述)や『江戸町鑑(ちょうかん)』を発行する特権をもっており、書肆(しょし:書物を出版したり売ったりする店)としての格式第1位の老舗である。

 絵では右に蔵があり、左が店舗である。「書林 書肆」と書いた大きな箱看板が目立つ。店の屋根には「御用 御書物所 出雲寺和泉」の看板が読める。のれんの下の防火用水桶の上には広告札が掛かっている。「江戸大繒」、「諸國名所」、「道中記」、「大成武鑑」とある。売れ筋の書物に違いない。

 

江戸大繒は江戸の地図、諸國名所は、いまでいう観光ガイドブック、道中記は東海道や中仙道、日光街道を歩いて旅する案内書で、伊勢詣のものあった。

 (大成)武鑑は、江戸時代の大名や幕府の諸役人について詳しく書かれた紳士録・人名録のようなもの。御用商人にとっては、取引先の情報を得るための実用書であり、藩士(武家)にとっては、武鑑に記載された紋所で人物を識別して、相応の対応をとる際の情報源となっていた。

 ちなみに江戸町鑑は、武鑑と同じように毎年改定されて出版され、主な内容は、町奉行所関係の名簿、名主名簿とその支配町名、町ごとの火消しの纏(まとい)や管轄範囲の図、町名・地名一覧である。

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●糸物問屋(久野屋善助)

店先に纏のような糸の束が見える。麻綿糸問屋として、縫紐から麻紐まで幅広い商いを行っていたようだ。

 ところで天保八年(1837)、この久野屋から暖簾分けして、現在の銀座5丁目みゆき通りに、「久野屋菊地利助商店」が創業した。驚くべきことに、創業から176年、現在も営業中である。いまは「銀座くのや本店」として和装小物専門の有名店である。(東京都中央区銀座1-28-12 鹿倉ビル3階)

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●呉服問屋・白粉問屋(近江屋甚兵衛)

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大きな暖簾で店内は見えない。文政七年(1824)発行の『江戸買物独(ひとり)案内』にも掲載されている。

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●薬種問屋(小西林兵衛)

 お店の屋根には「けとく(解毒)」の看板。右側には「順血湯」の建て看板。薬袋の形の下げ看板は、「薬種 小西 林兵衛」と読める。さらに下げ札には「人参痢症圓」、「風一切乃薬」、「たん せき 妙方品類色」、「六味地黄圓」とある。さらに道に置かれた箱看板は、「小西 林兵衛 けとく」と読める。ずいぶんにぎやかな店である。

 解毒というのは、体内から毒を排出するという意味で、「薬」を指すのであろう。

 なお、順血湯の効能は、脳溢血、眩暈(めまい)、頭痛、耳鳴り。人参痢症圓は嘔吐や下痢症に効く。そのほか、風邪に効く万能薬、たんやせきをしずめる妙薬もある。さらに六味地黄圓(六味地黄丸)は、貧血症状の改善、滋養強壮作用、血行障害の改善、排尿困難、頻尿、むくみ、かゆみなどに効能がある万能薬だったようだ。

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●居酒屋(山屋?)

 店の中で1杯やっている男が見える。いつの世も勇気を仕入れるのは「居酒屋」だと思う。

江戸は大工や職人など、男性のひとり者が多かった。庶民の憩いの場である居酒屋の出現は、江戸時代である。最初は酒屋の店先での立ち飲みが起源らしい。どうやらこの頃の居酒屋では、豆腐の田楽や煮物など、おつまみも簡単なものが多かったようだ。それにしても、昼間から飲めるなんて・・・、天下泰平である。

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